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水のゆくえ

〔 短編集形式・長編 / ハイファンタジー / 和の花 / 家族 / シリアス・かなしい・暗い 〕

和の花をモチーフにした、短編集形式の長編小説です。
「古清水(こしみず)」という土地が舞台のお話です。
鎮守の白桜を守る武家の子・水央(みお)と、塞ノ神を統べる豊穣神・常盤(ときわ)。
これは古清水で生きる人たちの、いくつかの生と死の物語です。

収録内容

この物語は、それぞれの花をモチーフに、登場人物ひとりひとりにスポットを当てた短編集形式の物語です。ひとつの土地を舞台に物語が進むため、各話で繋がりのあるお話もあります。


序 この水の行方
 逢瀬(おうせ)は夫との初めての子を身篭った。だが、その子を産むのは身体が保たないかもしれないと医師から言われてしまう。

【一、立葵】 梅雨が明ける
 梅雨の時期、鎮守の白桜を守る武家の子・水央は、友人でもある豊穣神・常盤に会いにいく。そのまま彼の屋敷に泊まることになるのだが、水央には心の底では思い悩むことがあった。

【二、花菖蒲】 巌穿つ雨
 水央の父、時雨(しぐれ)は雨の日の散歩を好んで行っていた。彼はあるとき、雨に打たれて震えている女を都の中で見かける。

【三、蓮】 いつかかえるところ
 ある夏の日、常盤は娘三人と白鹿を連れて、山の頂にある妻の墓参りにでかける。休憩中、常盤は妻の雫姫(しずくひめ)と出会ったときのことを思い返す。

【四、朝顔】 いざなう潮
 漁師の浮舟(うきふね)とその娘凪(なぎ)。浮舟は数年前夫を海で亡くして以来、夜の海鳴りの音に心を悩まされるようになっていた。

【五、撫子】 憂世の底で歌う
 五十鈴(いすず)は両親から楽才を受け継いだ、都でも大人気の歌姫。そんな五十鈴は、心に親のいない寂しさを抱えていた。あるとき、声が突然出ないようになって……。

【六、曼殊沙華】 秋が輝く國
 白い身体に朱斑の入っていたことで仲間に認められなかった白鯉の小波(さざなみ)。彼は五十年前の鬼神戦争で武勲を上げるため、四聖天の号令で参陣する。

【七、梅】 歌い継ぐもの
 五十鈴の父にして花咲きの楽人である音羽雀(おとわすずめ)。妻の後を継ぎ、花咲きの旅に出た音羽雀だが、妻と同じように音楽で花を咲かせることができず……。

【八、桜】 花の下にて
 これは一話より前のお話。花守の武家の子・水央は一族のかわりに夜の花守についていた。暇を持て余していた彼は、白桜の前に端麗な顔立ちの男が立っているのを見つける。

【九、椿】 花が逝くよ
 常盤の元へ嫁いでしばらく。初めて常盤との子を産んだ雫姫だが、生まれた子は身体が弱かった。娘の身を案じる雫姫は薬草を摘むため常盤に内緒で山の頂を目指すのだが……。

【十、牡丹】 実りを生む手
 五十年前、鬼神たちは古清水の資源を奪うばかりの都に宣戦布告したが、四聖天を前に鬼神たちは敗れ去る。死にかけた鬼神の八瀬(やせ)は山の中で倒れてしまう。

【十一、勿忘草】 いつか貴方が死んでも
 五月の花祭りの日。常盤の次女花葉(はなば)は水央から勿忘草の花が贈られてきているのを見つける。花葉は過去の悲しい出来事を重ねて不安になり、水央に会いに行く。

終 果てない流れ
 あの日の梅雨の日からもうすぐ一年。ある休日の日、水央は常盤に会いに行きます。

番外編
金木犀 途の枝折

 四聖天のひとり、竜海(たつみ)は友人である常盤の元へ遊びにやってくる。

水仙 雪渡り
 四聖天のひとり、真白(ましろ)は五十年前の惨劇のことを思い出す。



世界観・用語解説


古清水(こしみず)
 物語の舞台。豊富な水源によって森や肥沃の大地が形成された、水と緑の美しい土地です。
 人々は都の内で暮らし、白い花を塞ノ神、四聖天を守護神として崇めています。

四聖天(しせいてん)
 古清水の地を守護している四柱の武神です。
 それぞれ四方を担い、古清水に涸れない水の恵みと、季節をもたらします。
 東方の白蓮(はくれん)、南方の龍王(りゅうおう)、西方の宝貝(ほうがい)、北方の白鷺(しらさぎ)の四柱です。白蓮と白鷺はそれぞれ生と死を司る神とされています。

霊獣
 四聖天に仕える白い獣たちの総称です。
 四聖天同様、獣でありながら人に化身する、知性と理性と持つ、長寿な生き物です。


 人々が住み暮らしている町。海や川に囲われ、町中に水路が張り巡らされた水の都。丘の上には鎮守の白桜が立ち、あちこちに塞ノ神が咲き守っている。東西南北と中央の地区によって分かれています。

泉界(せんかい)
 古清水に伝わる、死者の魂が行くといわれている場所。死者の魂は泉界の中で、新たに別の命として生まれるときを待つと言われています。


試し読み


 作品内の一部を試し読みとして公開しています。

 立葵 梅雨が明ける Sample
 桜 花の下にて Sample


仕様

「水のゆくえ」
 形態:A5判・二段組み / 148P / 600円
 発行:トナカイの森 / 葛野鹿乃子
 発行日:2017年9月18日(第五回文学フリマ大阪)

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